佐藤のこなみかん

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鉄腕アトム(1963)をちびちび見てたまに紹介。 68話 誰がために壁は空く

鉄腕アトム(1963) 第68話 時計塔の秘密の巻

暗闇をサーチライトが照らす中、空港に一機の航空機が到着した。夜のフライトを終え、乗客たちは思い思いに席を立っていく。そんな乗客たちの様子を、静かに観察している女がいる。女は写真を手に、二人組の男を探しているようだ。しばらくして、その二人組が機内から現れた。女は近づき語り掛ける。

「テンポ博士ですね?お迎えに参りました。こちらにどうぞ…」

3人を乗せた車は、夜の街を走り抜け、街中の寂れた時計台の前で止まった。近くの住民にはもっぱらお化け屋敷と呼ばれているその不気味な時計台は、10年前までは時計博物館だったようだ。中では無数の時計が、それぞれ止まった世界の時間を示し続けている。

3人は時計台の中に大型の望遠鏡を設置し、中を覗き込む。

「フフッ、これはいい。我々のために作ってあるようなものだ…」

3人の覗く、その先には、お茶の水博士が長官を務める科学省が悠然とそびえ立っていた。

 ここまでで伝えられてるといいなと思うのですが、今回は完全にスパイ映画のノリですね。3人のちょっとした会話以外は無音に近く、とにかくひっそりとした演出になっております。まさに、前回で少し触れた、引き込まれる出だしに感じるパターンだと思います。

やっぱりこういった「只事じゃない」と感じるような出だしに引き込まれているんですかね。ピリピリとした空気を感じると思わず気合を入れて見る姿勢になってしまいます。

ちなみに、普段こういう、僕がビビっときた回しか話題に出さないのでいつものアトムのノリがどんなものか分からない人も多いかもしれませんが、基本的にはここまで切迫した感じの話はそんなにないです。(笑)

まぁ毎回今回のような話だと子どもも見てて疲れちゃうでしょうから、このぐらいたまにあるのが丁度いいのではないかなと妄想してます、(笑)

 

3人の中のリーダーらしいテンポ博士は、”HBH計画”なる作戦を他の2人に説明する。2人には、そのHBH計画に必要な科学物質や必要機材を、各研究所から強奪することを命じられる。HBH計画とは具体的にどんな計画なのかとマリーは問うが、テンポ博士は質問には答えない。マリーは思わず口を開く。こんな仕事はもう嫌だ、足を洗いたい、と。世界の平和を脅かす悪の科学者を野放しにするのかとテンポ博士はマリーに詰め寄るが、マリーは組織へ従い切ることがもう出来ないようだ。テンポ博士はその様子を見て、今回が仕事が終われば、マリーを自由にすると約束する。それを聞き、マリーは嬉しそうに部屋を出ていく。去っていくマリーに目を光らせながら、テンポ博士はもう一人の男、モスキートに命じた。

「仕事が終わったらマリーを消すんだ」

マリーが足を洗いたいと話すシーンで、マリーは自然と時計の振り子に手を触れ、その振り子を無意識に揺らしながら話し始めるのですが、ここが完全に遊戯王アークファイブ状態なので地味に面白いと思いました。(笑)アークファイブの主人公である榊遊矢は振り子(ペンデュラム)のネックレスを愛用しており、それに由来して作中の優柔不断な様子から「振り子メンタル」などと揶揄されるのですが、こういった形で実際に昔から、振り子は人の心の迷いを現すアイテムであったことを垣間見ると、遊矢への見方が少し変わったような気がします。アトムと関係ない話ですね。(笑)

ちなみに今と変わらないと言えばもう一つ。

他の仕事なら何でもやります」

とマリーが言ったときにテンポ博士の目がキラリと光る描写があるのですが…

あっ(察し)

 今日も日は昇り、新しい一日が始まった。アトムとウランは元気に学校へと向かう。その途中、ウランは古びた時計台に美しい女の人がいるのを見つけた。ウランが手を振ると、その女性も儚げに手を振り返す。しかし、奥から出てきた年老いた男が女性を押しのけ、怖い顔つきでウランをにらみ返し、影へと消えてしまった。そのことを兄のアトムに話すと、あの家は誰も住んでいないんだよと一蹴されてしまう。

 「きっと人さらいが住んでんのね…!」

 ウランは友達のラァラを誘い、時計台の探検に行くことを決意する。時計台へ忍び込む二人。中は無数の時計がひしめきながらも、ひっそりとした静かな空間だった。二人はそこで人が住んでいる形跡を見つける。

 「見たな、ちびっこめ」

震える二人が振り返ると、銃を手にしたテンポ博士とモスキートが立っていた。

ここからウランちゃんとラァラは捕まってしまい、体のエネルギーユニットを取られて身動きが取れなくなってしまいます。ウランちゃんは登場初めての回で兄と同じ10万馬力を振り回すことに楽しみを感じていて、ロボット大会に出て闘うのって楽しい~♪みたいなことを言ってて、僕の中ではバーサーカーの認識になってるのですが、最近はやたら人質になることが多いです。正直なところ、この子カマトトぶってるだけなのでは…と思っているんですがどうなんでしょうか。初登場の話のオチがどうなったのかあんまり覚えてない。(笑)まぁウランちゃんも中身はアトム以上に子どもですからね。怖けりゃ戦えなくもなるでしょう、多分。

科学省では、最近出没する二人組の怪盗、ブラックマンへの対応に追われていた。その二人組は科学物質や機材だけを狙って研究所を襲っている。警視庁も全力をもって警戒体制をしいているが、いつもその網を潜り抜けられてしまう。お茶の水博士は不甲斐ない警視庁にしびれを切らし、アトムに警備を依頼する。妹ウランが行方不明であり警察はそちらの捜査が進展していないことも自覚していたが、それでもアトムに警備を頼むしかなかった。いつもアトムに対し強くあたるタワシ警部までもが、すまなそうにアトムに頭を下げる。

「ええ、ブラックマンを捕まえるためでしたら、喜んでお手伝いします」

その夜、重要機材を輸送すると偽情報を流し、アトムが隠れたトラックが研究所を出発した。予想通り、ブラックマンはトラックを襲う。アトムは荷台から飛び出し、ブラックマンに立ちはだかる。2人組のうち一人を取り押さえるアトムだったが、残りの一人に目を潰され、鎖でがんじがらめにされた上に、切り倒した大木により下敷きにされる。タワシ警部たちが現場へ追いつく頃には、ブラックマンは悠々と逃げ去った後だった。

 「アトム君でも手に負えないのか…」

 まさかのアトム敗北です。

人間相手でアトムが負けることってほぼないのですが(スペックを考えれば当然ですが)、今回は2対1とはいえ空中での身のこなしもアトムと同程度と見え、アトムの1瞬の隙をついて完全に無力化しています。ほんとに恐ろしい。モスキートは範馬勇次郎とかそういう類の人種なのでしょうか。

ちなみに、これと言って深い意味はないのですが、目を覆い隠されてその上鎖で縛られてますね。

ふむ。

 

ふむ。

 

偽情報にかかったことで計画のスケジュールが遅れ、テンポ博士は怒り狂う。怒りに任せながら、博士は遂にHBH計画の全容を語り始める。それは、科学省で開かれる国際会議をこの時計台から光線装置で攻撃し、会議に参加した科学者を一人残らず殺すというものだった。

「会議に参加する奴らは我々の国を滅ぼそうと企み、核戦争の打ち合わせを行うのだ。地球の平和を乱すインチキ科学者どもに、勝手なことをさせてはならないのだ!」

テンポ博士はマリーに念を押す。科学省の科学者たちは悪の科学者だと。

マリーは捕らえられているウランとラァラの元へ行く。エネルギーユニットを取られた二人は息も絶え絶えといった様子だ。マリーは、作戦が終われば自分が必ず二人を逃がすと約束する。ウランはかすかに動く口から、父と母、そして兄の名を絞り出した。

「お兄ちゃんがいるの?」

 「アトムお兄ちゃんね、すごーく強いのよ…」

一応言っておきますが、科学省はお茶の水博士率いるごく普通のお役所であり、少なくとも核戦争を狙う団体などでは断じてありません。テンポ博士の完全な嘘ということになりますが、博士が本当にそう信じ込んでいたのか、それとも科学省にまた別の恨みがあったのかは明かされません。この辺の下りは、デマやフェイクニュースが最大の問題の一つとなっている今、2017年の状況を考えると中々何とも言えないものがあります。この場合は嘘をついているのが国のお偉いさんの科学者ですから、デマニュースには気を付けましょうという次元の話ではないのですが、世の中国家ぐるみでこんなことをしている国もまだまだ世界にいくつもあるようですから、悲しい話です。こういうやり方は悪い意味で普遍性があり、世界の中でいつでもどこでも使われる可能性がある、ということは知っておかねばならないことなのかなと思います。

翌日、遂にレーザー装置完成の目途が立った。あとは最後のパーツが完成すれば装置は完成する。しかし、そのパーツの製造に必要な金属があるとされる研究所はなんと標的である科学省であった。テンポ博士はマリーとモスキートに科学省への潜入を命令する。任務の危険性を鑑みて、テンポ博士は二人に毒薬を渡す。捕まったらそれを飲めば苦しまずに死ねると。

モスキートとマリーはお茶の水博士の乗る車を襲い、博士に銃を突きつけ科学省へ潜入する。お茶の水博士はどうすることも出来ず、賊の目的である金庫の前まで来てしまった。博士に金庫を開けさせ、モスキートは目的の金属を手に入れる。しかし、アトムはその一瞬の隙にクレーンを操作し、お茶の水博士を救い出す。そのままガラスをぶち破り、二人の前に立ちふさがる。しかし二人の反応も素早い。煙幕をまき、華麗な身のこなしで窓から闇の中へと消えていく。アトムも科学省の壁をぶち壊し後を追う。賊は二手に分かれた。その片方を追い詰めるアトム。アトムの攻撃でブラックマンは吹き飛ばされる。そのブラックマンはマリーであった。マリーは毒を飲み倒れた。

 この場合は業務上やむを得ない壁破壊だと思われるのでこれでアトムを責めるのも筋違いだと思うのですが、相手はきれーに壁をピョンピョンと飛び移って行くのに対してアトムだけバコバコとお構いなしに壁を直進してるので、絵的にはどうしても面白いです。(笑)これだけ見るとどっちが悪役なのか迷ってしまいますが、まぁそういった「点」で物事を見る危険さをアトムは壁をたたき割ることで僕たちに教えてくれているのかもしれないですね。

ですね?

 マリーが飲んだ毒は少量であり、病院での処置によって一命を取り留めた。アトムらが見守る中、病院で目を覚ましたマリーは命を救ってくれたことへ感謝を伝える。マリーは、今まで自分が闘っていたロボット、そして自分を助けてくれたロボットが、ウランの兄であるアトムだと知る。マリーはお茶の水博士に尋ねる。あなた方は弱い国々を滅ぼす相談をするんですねと。お茶の水博士はそれを真っ向から否定する。今回の会議は、科学を戦争に利用することを絶対にやめようとするものだと。マリーが聞かされていた話は、全部真っ赤な嘘だったのだ。

 時計台では、逃げ延びたモスキートが持ち帰った金属を用い、遂に光線装置が完成していた。今日の10時、会議の開会と共に装置は起動し、科学省の科学者は全員この世から消え去る。

9時50分、マリーはアトムにすべてを打ち明ける。時計台で殺人光線装置を作っていたこと、それにより今日10時に科学省を攻撃すること、地下室に妹ウランが捕らえられていること。

全てを知ったアトムは、病室の窓から、時計台を目指し飛ぶ。

 いやぁ、皆さん見て下さい。いいですか、ここ大事ですよここ。窓からですからね!(笑)

 もうほんとに、アトムが「いよぅし!」って言って飛び立つと大体次のコマでは壁に穴空いてるので、このシーン僕はほんとにもう見ていて心配で心配で…(笑)

 良かった、病院の壁を破壊するアトムはいなかったんだね…(涙)

9時59分。アトムは時計台にたどり着いた。時間がない!

アトムは時計台の壁をぶち抜き、内部へ侵入する。モスキートはすぐさま迎撃するが、アトムは攻撃をすべて交わした。

「もうやられないぞ!」

アトムはモスキートとテンポ博士を吹き飛ばし、壁を貫通させ穴を開け、さらにそのまま部屋の中で大暴れし殺人光線装置も破壊する。しかし、テンポ博士とモスキートはしぶとく、すぐさま飛行機へと乗り込み脱出する。それを追いかけようとするアトム。大暴れしたため、時計台にはもう壁がない。そのまま広い大空へと羽ばたき二人を追う。

飛行機に追いついたアトムはその壁をぶち破り、またも大暴れし、飛行機を破壊する。アトムはテンポ博士とモスキートを捕らえ、飛行機を脱出した。

捕らえた二人は無事に警察へと引き渡され、地下室からウランとラァラも救出された。再開を喜び合う兄妹を祝福するかのように、11時を知らせる鐘の音が時計台から鳴り響いた。

 いや、もう皆さんも言いたくなってるでしょうが、僕も言いたい。

どんだけ壁壊すねん。(笑)

 まぁ今回のこのアトムが大暴れするシーン、まるで怪獣みたいでめちゃくちゃ爽快感ありますけどね。見ていてとてもスカッとする。いいぞアトムやれやれと思わず感じる。

難しい言葉使えないのでカタルシスとか言えないのですが、破壊欲求の満たされるみたいなものをこの回でクッキリと感じました。

今まで洒落で壁にパカパカ穴開けてたのかと思ってたのですが、作品としてはこれはこれで意図があってやってるのでしょうな。アトムの壁の穴開けは、アトム自身の力強さを表すのと同時に、僕たちの中にだれしもある鬱屈した精神に穴を開け、吹き飛ばしてくれているのかもしれません。

かもしれないだけなので違っても怒らないで下さい。(笑)

 

あと、アトム自身は目の前のことに一所懸命でついやっちゃってるだけだとも思いますが。(笑)

いつでも一所懸命なアトムが可愛い!ということで今回は終わりです。

それでは、皆さんも壁に風穴を空けられることを願って!